プロジェクト紹介

最終更新日:

NJPPP事業紹介パンフレット

NJPPPが現在まで実施してきた途上国・新興国の栄養改善に向けた取り組みや、今後の活動予定を紹介するパンフレットは、こちらからご覧ください。
(2024年2月末現在)
NJPPP事業紹介パンフレット
※97.5 MBとファイルサイズが大きいためダウンロードする際はご注意ください。

はじめに

現在世界の人口の3分の1は何らかの形の栄養不良(低栄養、特定の栄養素不足、過体重、肥満、食事に起因する非感染性疾患)の状態にあると言われています(※1)。また、世界では8億人以上が飢餓の状態にある(※2)一方で、5歳以下の小児では3900万人、5~19歳では3億4,000万人以上、18歳以上の成人では19億人が過体重又は肥満です(※3)。

「職場給食の栄養改善」は労働者の栄養や健康状態を改善し、雇用主にとっても大きなメリットがあることが証明されているものの、その取り組みは世界でまだ普及しているとは言えません。このような状況を踏まえて、NJPPPは「アジアに進出する日系企業における職場給食の栄養改善」に取り組むことから始めました。日本の企業は、もともと従業員の健康管理への関心が高く、国内では「健康経営」の認証制度が広がるなど、経営層として職場給食の改善への社会的機運は高まっています。従業員との信頼関係が構築されている企業からは、給食の改善とその効果に関する実証実験への協力が得られます。NJPPPでは、この成果を起点として、その国の栄養改善の方向性を示すことができるのではないかと考え、東南アジア諸国でケーススタディを重ねています。

また最近では途上国における野菜摂取量の増加を目指したプロジェクトも実施しており、その対象はアジアのみならずアフリカへも広がり始めています。

出展
※1 The Global Alliance for Improved Nutrition (GAIN), Malnutrition, https://www.gainhealth.org/about/malnutrition
※2 「要約版 世界の食料安全保障と栄養の現状 2022年報告」国際連合食糧農業機関(FAO)
※3 World Health Organization(WHO), Fact sheet : “Obesity and Overweight” 9 June 2021

  • これまでのプロジェクトを通じてわかったことや課題はこちらをご覧ください。

近年の取り組み

各国における取組みは、こちらからご覧ください。
インドネシア  カンボジア  ベトナム  ミャンマー  フィリピン  アフリカ

 

インドネシア

「職場給食のメニュー改善を通じた栄養改善」プロジェクト

開始年月
2016年8月
法人名
味の素株式会社、不二製油グループ本社株式会社
パートナー団体
十文字学園女子大学大学院、ボゴール農科大学
インドネシア大学
概要
 カラワン工業団地における工場労働者向けに、栄養バランスのとれた職場食を導入するプロジェクト。インドネシアでは、依然として栄養不足が存在すると同時に、栄養バランスの悪い食事を過剰に摂取することにより肥満といった生活習慣病が急増する「栄養不良の二重負荷」が課題である。食事に関する正しい知識を持ち、食習慣を変える「行動変容」の実現の場として、工場などの職場でのアプローチに注目した。
報告書
現地調査概要  現地調査報告書(2016年11月)
インドネシア・ジャカルタの家庭の食事実態調査報告書
インドネシア工業団地における工場食サプライチェーン基礎調査最終報告書
職場におけるインドネシア女性の栄養状態基礎調査(日本語要旨) オリジナル英文最終報告書 最終報告書別表(英文) 参照した文献リスト(英文)
インドネシア工場視察報告書(2017年2月)
「糖尿病・高脂血症ハイリスクのジャカルタ女性の健康改善に及ぼす粒状大豆たん白質の効果測定」に関する調査研究報告書

「給食提供による栄養改善」プロジェクト

開始年月
2018年11月
法人名
株式会社都給食、特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)
パートナー団体
ボゴール農科大学
概要
 デルタマス工業団地において、バランスの取れた給食(職場食)の提供、現地学術機関の協力のもと栄養教育(スマートフォンアプリによる情報発信)、衛生教育等の食育を行うことにより、従業員の栄養改善を図る。2018年11月にプロジェクト導入協力工場を訪問、視察し、工場食の問題点を研究委託先のボゴール農科大学と解析した。その結果、食事の栄養バランスの問題に起因すると考えられる過体重、高血圧等が多いことが判明した。2019年2月~5月に実施したパイロットスタディでは、健康メニューの提供と栄養教育の組み合わせにより、摂取する食材の多様性が向上する等の行動変容実現の可能性が示唆された。2019年8月には、その結果についてジャカルタ郊外の2カ所の工業団地で日系の工場関係者対象のワークショップを行なうとともに、現地給食業者との情報・意見交換を実施した。現在、Phase2としての活動(野菜摂取に焦点を当てた新たな健康指標によるインパクト評価)を継続するとともに、他工場への横展開を進めている。
報告書
「インドネシアでの給食提供による栄養改善プロジェクト」最終報告書
「インドネシアでの給食提供による栄養改善プロジェクトPhase2」最終報告書(ダイジェスト版)

インドネシアにおける野菜摂取促進に関する調査(2021)
インドネシアにおける健康的な食事の普及に関する調査2022, 2023

開始年月
2022年2月
法人名
株式会社大林組
特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)(2021年度、2022年度)
パートナー団体
株式会社メロス、IPB大学(2021年度)
PT. Equator Bumi Energi(2022年度)
PT. Java Food Pairing、PT. Varion Agritech Indonesia、International Life Sciences Institute Japan(ILSI Japan)(2023年度)
概要
 インドネシアでは、国民の野菜摂取量が少ないことから、政府は野菜摂取促進を政策として掲げているものの野菜摂取量の減少傾向は改善せず、栄養改善の実現において大きな問題と認識されている。株式会社大林組は循環型社会の実現に向けた取り組みの一つして、農水産業を含めた食料供給に関する領域での新規事業開発を進めている。適時適量で、その土地に適した安全で美味しい食料を提供できる「食の地産地消モデル」を目指し、国内外において事業参入の機会を探索している。インドネシアでは、食料原料の生産と食事の提供サービスに着目し、生産サイドに関しては高効率な生産の仕組みを独自に開発し、低価格、安定供給、安定品質での供給を目指した取り組みを行う一方、消費サイドはBtoBに限らず、BtoC、食事の在り方にも視点を拡げ、新しい供給サービスにより野菜消費拡大や栄養改善につなげたいと考えている。

 2021年度の調査
 野菜摂取の促進を妨げている要因としては、1)野菜のサプライチェーンが確立されておらず、消費者が良質の野菜を安価に入手することが困難であること、2)人々の野菜摂取の重要性に対する認識が低いため、野菜に対する需要が高まらないこと、の2つが主なものと考えられた。今回は2点目にフォーカスし、人々の野菜摂取に関わる状況と栄養摂取や野菜に対する認識を明らかにする調査を実施することで、野菜の消費向上に対する阻害要因を特定する。この調査に基づいて、人々の野菜摂取を促進する戦略を明確にし、品質の良い野菜の生産から流通までのビジネスモデルを検討するとともに、野菜摂取促進と国民の栄養改善の寄与を目指した。

 2022年度の調査
 2021年度の調査結果からインドネシアの人々は野菜への関心度が低いことが示唆された。これに対し、食事や健康に対する認識をより深く理解し、多様な食材の摂取を促進できる方法を見つけることで、野菜の市場拡大を図ることを目指している。 2021年度の調査では、インドネシアの人々の栄養改善には、母親に対する栄養教育や新しいメニューの提案、多様な食材の調理法の提案などといった解決策が抽出された。既に野菜を習慣的に摂取している層は、野菜摂取に対する心理的障壁は顕在化していないが、手間を減らし、レシピを充実させたいということが見えてきた。この結果から、2022年度は栄養バランスのとれたミールキットを作成し、栄養教育サービス付きで提供することにより、家庭の野菜摂取量や食事の質、栄養バランスを改善できるかを検討した。その結果、介入後に野菜摂取頻度と摂取食品数に改善傾向が見られ、健康的な食生活を始めようとする人が増えた。ミールキットの嗜好性は高い評価を得られ、ミールキットの価格設定や食品ロス、賞味期限などの課題を抽出することができた。

 2023年度の調査
 インドネシアにおいて、品質の良い野菜の生産供給ならびに栄養バランスの取れた食事の提供サービスを合わせたビジネスを実現することで、人々の栄養改善に寄与することを目標に、プロジェクトを進めている。昨年度の調査結果に基づき、今年度はビジネスコンセプトに関する調査検証と事業化戦略を立案するために、次の調査を実施した。
①事業化の可能性に関する調査(ターゲット層へのアンケート調査)
②製品とサービスに関する検討。
これらの調査の結果、顧客ニーズの特徴やサービスコンセプトの方向性、顧客セグメントの分析による市場性やインドネシアでの類似サービスを提供する事業者との競合を具体化することができた。製品開発には現地大学の協力を得て進めてきた。 今回のプロジェクトを通じて、ターゲットとする顧客層が受け入れ易く、これまでに挙がっていた課題解決にも繋がる健康的な食品としての製品形態や栄養サポートサービスとしてのツールと、その機能を具体化することができ、ビジネスコンセプトの具体化に繋がった。今後は事業収益性の試算とともにインドネシアの栄養改善に効果的なビジネススキームを検討する必要がある。  
報告書
野菜と生鮮トマトの消費に関する消費者調査結果(2021年度)
インドネシア国民の健康に関する栄養学的な解析(2021年度)
インドネシアにおける健康的な食事の普及に関する調査2022(2022年度)
インドネシアにおける健康的な食事の普及に関する調査2023(2023年度)

「インドネシア共和国における学校給食調査2024」プロジェクト

開始年
2024年12月
法人名
株式会社東洋食品
パートナー団体
インドネシア国立ハサヌディン大学
概要

インドネシアの子供たちの間でも栄養不良の二重負荷が起きていると考えられるが、子供たち本人及び保護者にその認識がない可能性があるという仮説から本事業を提案した。またインドネシアの新大統領は幼稚園から高校まですべての生徒に無償の学校給食を提供することを公約としている。今回の事業はインドネシア共和国南スラウェシ州マカッサル市に住む保護者と子ども及び学校職員を対象に調査し、インドネシアの学校給食に必要なメニューや食育の内容を検討するための基礎調査を行う。学童期と思春期における栄養状況・生活習慣に関する調査として、幼稚園児から中学生計509名にアンケートとヒアリング。身長や体重も計測する。質問内容はハサヌディン大学にも確認済。保護者や学校職員にヒアリングを実施。東洋食品とMOUを結んでいるハサヌディン大学は地元の地方政府や学校とのネットワークを持つことから、同大学所在地であるマカッサル市を対象としている。また、ハサヌディン大学のアントロプレナー担当の副学長を東洋食品が運営している給食センターに招待して、日本の給食について理解を深めた。経営戦略として、学校給食事業を継続的事業として開拓・発展していく方針。ビジネスモデルとしては、上流の制度への助言、下流の給食センターの運営などを通じて、日本式の学校給食を現地にあった形で提供したい。

2024年度
調査結果は以下のとおりであった。
①マカッサル市の幼稚園、小学校、中学校、高校の児童生徒の栄養状態の結果

  • 男子は過体重・肥満が24%、やせが9%。女子は過体重・肥満が19%、やせが13%。正常体重の者は全体の2/3であり、過体重・肥満が多い傾向にあった。
  • 特徴的な結果は、10歳~14歳の男子の過体重・肥満と若年女子の栄養不良であった。

②児童生徒の食生活と食嗜好(マカッサル市で調査対象となった幼稚園、小学校、中学校、高校の児童生徒)

  • 朝食を毎日食べる者は60%であり、朝食を摂取しない子どもは多い。朝食欠食にとって、給食は有効であると考えられる。
  • 昼食と夕食で食べている内容から、米の摂取量が最も多く、乳製品や大豆製品の摂取量が少ないことが分かった。
  • 児童生徒に人気の間食はスナック菓子であり、果物の人気は低い。
  • 野菜と果物の摂取強化の必要性が示唆された。
  • 乳製品の補助的摂取の推奨が必要と示唆された。

③保護者への聞き取り結果(保護者の認識)

  • 保護者の多くは健康的な食事の重要性を認識していた
  • 家庭では野菜を取り入れることを重視し、家族で食卓を囲むことが広く実践されていた。
  • 栄養知識は有しているものの、継続的な実践とはギャップが見られた。
  • 約8割の保護者が、子どもの健康状態を心配していた。約4割の家庭で子どもの肥満傾向や体重増加が課題として認識していた。
  • 運動習慣のある子どもが5%と少ないことが分かった。

④教師への聞き取り(教師の認識)

  • 生徒が好むおやつとして、塩味のスナックが好まれ、フライドポテトやソーセージなど手軽なスナックが選ばれやすいということ。
  • ほとんどの生徒はおやつを学校内で食べている。
  • 学校給食に対しては、食品の品質と安全性・子どもの嗜好と食品ロス・教師への負担や責任について懸念していることが分かった。

⑤保護者に向けた栄養説明会
ハサヌディン大学公衆衛生学部が試食用の献立を3パターン作成し、調理及び提供した。バランス良く食べることの重要性を説明した。

 本調査から得られた栄養課題に対し、学校給食・食育の役割は非常に大きいと考えられるため、学校給食事業への参入が可能であれば、官民連携も模索しつつ参入を目指したい。

報告書
「インドネシア共和国における学校給食調査2024」プロジェクト報告書

カンボジア

「栄養強化米を使用した健康増進」プロジェクト

開始年月
2017年8月
法人名
特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)、DSM株式会社
パートナー団体
人間総合科学大学
概要
妊娠適齢期女性の微量栄養素欠乏は、母子の健康に深刻な影響を及ぼすとともに、職場(工場)においても欠勤率の増加、生産性の低下等を引き起こす。これらの状況を改善するために、カンボジアにおいて主食である米に一連の技術を使って不足栄養素を強化し製造した栄養強化米を使用し、食事からの微量栄養素摂取を高めると共に栄養教育を実施する。 これにより、導入工場の労働者の栄養状態の改善を実現すると共に、栄養に関する知識を深める。また、栄養強化剤製造業者にとっては、その販路を拡大する。
本プロジェクトは、現地NGOのRACHA(Reproductive and Child Health Alliance)の協力を得て実施する。倫理委員会の承認を獲得し、2018年11月から180名による12週間のパイロット実証試験を実施した。その結果、血清中葉酸濃度が栄養強化米飯の摂取頻度に比例して上昇し、有意に改善した。2019年7月、プノンペンにてワークショップを開催し、実証試験結果をカンボジア政府機関、国連WFP(World Food Programme:世界食糧計画)、現地企業等に情報提供した。現在、栄養強化米導入のスケール拡大を準備している。
報告書
カンボジアにおける栄養強化米を使用した健康推進戦略報告書
「栄養強化米を用いたカンボジアの職場における栄養改善効果実証試験」2018 年度報告書

「職場の栄養改善におけるブロックチェーン技術を応用した栄養啓発」プロジェクト

開始年月
2019年9月
法人名
株式会社富士通総研(2020年度よりRidgelinez株式会社)、特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)
概要
 栄養改善の実現において、栄養リテラシーの向上、食生活に関する行動変容の実現は大きな課題であり有効な手法が確立されていないのが現状である。ブロックチェーン技術を応用したトークンシステムがそのための有効な手段となり得ることを、「職場の栄養改善」を例として実証し、栄養啓発活動に関わる新たなビジネスモデルを確立するプロジェクト。またカンボジア政府機関に積極的に関与してもらい、カンボジアの栄養改善に関わる国家戦略のひとつとして位置づけてもらえるようにする。
2019年12月には、効果的なインセンティブの提供による栄養リテラシーの向上・行動変容の実現を確認するため、カンボジア(プノンペン)の日系工場にて100名による2ヶ月間のパイロット実証試験を実施した。2020年度は、次年度実施予定の数千人規模に拡大した実証試験実施に向けて、得られた課題(参加率の向上・システムの改善)を修正する追加実験を実施。①ターゲット対象者や人数の選定、②参加者をけん引するリーダーの選定、③アプリのシステムといったポイントを見直した結果、参加率が向上し、栄養に関する知識の向上にトークンシステムが有効であることが示唆された。今後はゲーム感覚で楽しみながら、健康な食生活についての知識が向上するだけでなく、自身の栄養摂取状況に関心を持つ習慣が定着することが期待されている。
報告書
「職場の栄養改善」におけるブロックチェーン技術を応用した栄養啓発活動報告書(2019年度)
ブロックチェーン技術による栄養教育促進事業プロジェクト(ICTによる栄養啓発プログラムアプリへの登録および栄養クイズへの参加率/成果)(2020年度)
ブロックチェーン技術による栄養教育促進事業プロジェクト(食・健康・労働に関するベースライン調査報告)(2020年度)
ブロックチェーン技術による栄養教育促進事業プロジェクト(食・健康・労働に関するエンドライン調査報告)(2020年度)

カンボジアにおけるふりかけを通じた食習慣改善プロジェクト

開始年月
2021年9月
法人名
一般社団法人国際ふりかけ協議会
パートナー団体
Cambodia Fish Farm
概要
 伝統的に米食文化であるカンボジアにおいて、近年、安価で入手しやすいスナック菓子や清涼飲料水を食事代わりにする児童が多く、低栄養や将来の生活習慣病が懸念されている。この問題に対処するため、廃棄される魚の骨を利用した栄養価の高いふりかけを開発し、栄養教育と併せて配布することで、人々の栄養に関する知識を高め、ふりかけの普及と定着を通した栄養改善及び食習慣改善を目指すプロジェクトを開始。初年度である2021年度は、配布するふりかけを試作し、食習慣の変化を測定するため小学校において介入試験を実施している。
報告書
ふりかけを通じた食習慣改善プロジェクト報告書(2021年度)

ベトナム

「啓発型健康診断と栄養改善プログラム」プロジェクト

開始年月
2018年11月
法人名
花王株式会社
パートナー団体
弘前大学COI研究推進機構、株式会社ブリッジ
概要
 ベトナム・ハイフォン市をモデル地区として弘前COI(Center of Healthy Aging Innovation)研究推進機構が推進してきた啓発型健診と食事・栄養改善プログラム等を導入し、その有効性と定着性を検証する。職域、地域、学域の三地域での展開を念頭に置いて進める。
2019年1月及び2月に現地にて基礎調査を行い、啓発型健診の事業展開の可能性を確認するとともに、導入候補となる数工場を訪問し、プロジェクトの目的・内容・具体的な進め方について説明し、導入候補となる2工場を選定した。この基礎調査結果を基に、国際協力機構(JICA)の「2019年度第1回草の根協力支援型事業」に申請し、採択されたことにより、今後はJICAの支援の下で事業展開を図る。 2020年7月よりベトナム人を日本に招き「啓発型QoL健診」やフォロー教育、指導などを行う人材を育成する等の本格的な活動を開始する。
報告書
「ベトナムにおける啓発型健診と栄養改善プログラム事業の展開」に関する調査研究実績報告書

ベトナムでの健康食品活用及び野菜・果実摂取に関する基礎調査(2021)
ベトナムにおける野菜の摂取行動に影響を与える要因調査(2022)

開始年月
2022年2月
法人名
カゴメ株式会社
特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)
Ridgelinez株式会社
パートナー団体
株式会社ブリッジ
ベトナム国立栄養研究所(NIN)
概要
 死因に占める非感染性疾患の割合が増加し、生活習慣病対策が重要な課題となっているベトナム。生活習慣病の予防として、野菜や果物からビタミンやミネラルといった栄養成分を摂取することが挙げられるが、現状ではWHOが推奨する1日あたりの野菜・果物摂取量(400g)に対して不足している人の割合が半数以上である。そこで、野菜や果実を使用した健康食品を普及させることで、ベトナムにおける野菜・果実の摂取量を向上させ、人々の栄養改善及び生活習慣病予防に貢献することを目指す。
 2021年度は、野菜や果実を使用した健康食品が効果的に普及するための方法を把握するため、ホーチミンを対象に基礎調査を実施した。

 2021年度の調査の結果、ベトナムでは野菜が生活習慣病の予防のために重要であるなどの機能性に関する知識は十分に浸透していないという結果が得られた。このことから、野菜の機能性や栄養機能に関する情報を発信し、消費者に野菜摂取の重要性を認知してもらうことが重要であると考えられる。しかし、情報発信がベトナムにおいて野菜摂取行動に良い影響を与えるかについては明らかにされていない。
 そこで2022年度は次の2点を明らかにするための基礎調査を実施した。①ベトナムにおける野菜の機能性や栄養機能の認知と野菜摂取や行動との関連の調査、②ベトナム人におけるパーソナリティと野菜摂取や食行動との関連の調査を実施した(近年の研究で、食事の選択の際には気質・個性といったパーソナリティの影響を受けることが報告されている)。調査の結果、ベトナム人の多くが健康のために必要な野菜摂取量を低く見積もっている可能性があることや、野菜の機能性・栄養成分に関する認知・知識と緑黄色野菜の摂取頻度の間に関係があることが示唆され、「必要な野菜摂取量に関する情報の普及」「野菜の機能性や栄養成分に関する知識の啓発」を行うことで野菜摂取量を促進できる可能性があることが分かった。また、緑黄色野菜の摂取頻度が多い人ほど、協調性・勤勉性・開放性といったパーソナリティ特性が高かったことから、パーソナリティに応じた情報発信などを行うことで野菜摂取の増加に繋がる可能性があると考えられた。
報告書
健康食品や野菜・果物に対する消費者の意識調査結果(2021年度)
ベトナム国民の栄養状態及び健康食品の現状(2021年度)
ベトナムにおける野菜の摂取行動に影響を与える要因調査(2022年度)

「ベトナムの病院給食における質の高い給食事業の展開」プロジェクト(2023年度)
「ベトナムの病院給食における給食システム検討プロジェクト」プロジェクト(2024年度)

開始年月
2024年1月
法人名
シダックス株式会社
パートナー団体
概要
 ベトナムでは2017年に栄養士が誕生し、2020年に保健省から病院の栄養管理に関する通達が出されるなど、栄養士が社会で活躍できるような法制度の整備が進められている。ベトナムの給食事業は、主に工場給食(職域での給食)における衛生管理や品質管理の向上は顕著ですが、病院給食は、栄養管理を可能とする給食提供のシステム化は進んでいない状況である。また、食品の栄養情報が不十分であり、病院での栄養管理の実態も不明である。
このような状況から、栄養改善につながる給食システムについては改善の余地があると想定される。より質の高い給食提供システムを提供することで、給食事業の経営改善の効果が期待できる。

 <2023年度プロジェクト>
 ベトナムにおける病院給食の実態を把握するため、2023年度は次の内容を実施しました。
①ハノイ市を中心した地域にある病院を対象としたWeb調査、②医療関係者との病院給食システムに関する意見交換。
また、適切な栄養管理の実現を目指し、既存の厨房施設2件について改善提案を行った。
今回のプロジェクトの結果から、ベトナムの病院では病態別の食事提供が出来ていないこと、安心・安全な給食を提供するための施設設備が整っていないことが明らかになった。
今後は調査対象病院を拡大し、最終的にはベトナム全土での調査を実施する必要がある。
また、今回の厨房施設の改善提案を基に、給食運営に携わることを目指す。
更に教育についても要望・必要が高いことが分かり、日本の栄養教育をベトナムの現状に合わせた教育プログラムとして、共同に開発していくことなども含めた形を視野に入れ、ビジネス展開を模索している。

 <2024年度プロジェクト>
1.ベトナムの3つ病院に実際に赴き、その病院にある給食システムについて病院の関係者を交え、システムの改善に向けた検討を行った。具体的には、病院給食の現状と課題に関する意見交換、患者給食提供の検討、電子カルテを活用した給食の連携方法と献立作成について意見交換を実施した。
2.ハノイ市を中心としたベトナムの病院における給食提供システムの実態調査をベトナム国家大学医科薬科大学の協力で実施し、給食の喫食率は25%以下と非常に低いこと、ハサップ(HACCP)に基づく管理システムを適用している病院は約50%であり、病院給食の品質向上を図るためには、より厳格な基準の導入と衛生管理の徹底が必要であることが分かった。
3.昨年度のヒアリングで、人材教育についての要望が高いことが分かり、日本の病院給食における衛生教育、主に献立作成につながる栄養教育に関する知見を独自に開発したE-ラーニング教育コンテンツを作成。病院給食管理責任者に給食管理・衛生教育プログラムを提供し、その効果検証をアンケート調査にて行った。結果、特に衛生管理のコンテンツで写真や動画がありイメージしやすくわかりやすい、短い動画でまとめられているので応用がしやすいという意見があった。一部、設備やインフラ整備、環境が日本と違うため応用できないところもあるという意見もあった。

本プロジェクト終了後に、ベトナム全土を対象とした調査を独自で実施する予定となっている。
報告書
ベトナムの病院給⾷における質の⾼い給⾷事業の展開」に関する実績報告書(2023年度)
ベトナムの病院給食における給食システム検討プロジェクト」に関する実績報告書(2024年度)

 

ミャンマー

「給食事業を通じた職場の栄養改善事業調査」プロジェクト

開始年月
2019年12月
法人名
ワールド産業株式会社、特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)
パートナー団体
中村学園大学
概要
 ワールド産業株式会社は、ヤンゴン・ティラワ経済特区に隣接する地点にセントラル・キッチンを設け、特区内の日系企業を中心に1日に1,000食以上の食事を提供している。給食事業を通じ、現地従業員の食生活向上を目指すが、実際には栄養のバランスを考えずに食事を摂取していることから、現地従業員の健康状態は概して良くないことが想定される。よって、職場での栄養バランスの良い食事提供と栄養教育の実施が、従業員の栄養、健康改善に繋がるだけでなく、生産性改善を通して進出企業の利益にもつながることが期待される。また、本取り組みをきっかけとし、ミャンマーにおける栄養教育及び栄養士の資格制度創設等、国民の栄養改善実現のための国家的取組みへと発展することも期待している。その第一段階として、導入先工場の選定やミャンマー政府関係者等との連携の可能性を探るため、2020年1月に現地調査を実施した。これに基づき、2021年度にはヤンゴン郊外の工業団地における日系の工場をモデルとした職場の栄養改善の為の介入試験を実施する予定であり、その立ち上げのためのメニュー開発や調査を続けている。
報告書
「ミャンマーにおける給食事業を通じた職場の栄養改善事業」現地調査まとめ(2019年度)
ミャンマー職場の栄養改善プロジェクト2020(2020年度)

「完全オンラインによるブロックチェーン技術を応用した職場における栄養教育」プロジェクト

開始年月
2022年12月
法人名
Ridgelinez株式会社、特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)、ワールド産業株式会社
概要
 ミャンマーには栄養士制度が無く、国民が栄養教育を受ける機会はほぼ無い状況にある。また、2020年にNJPPPプロジェクトで実施したミャンマーの職場給食の調査では、米と油、食塩の過剰摂取、微量栄養素の摂取不足であることが示唆された。
 今回のプロジェクトではミャンマーにおける栄養改善を推進するために、栄養教育を通して食の多様性を向上させ、栄養・健康状態の改善に寄与することに着目した。その方法として、職場の栄養改善を推進するために、ゲーム感覚で学べる栄養教育アプリが有効な手段となり得ることを実証した。また政情が不安定等の理由で渡航が困難な地域であっても栄養啓発活動の展開がオンラインにより完結できることを確認した。プロジェクトでは、対象者に対し①栄養・健康に関する知識と現状を把握するアンケートの実施(介入前後)、②栄養教育アプリによる食事記録と栄養クイズの挑戦(4週間実施)、③健康・栄養セミナーを実施した。介入前後のアンケートを分析した結果、摂取食品の内容、食行動変容ステージ、主観的健康度に改善が見られた。使用した栄養教育アプリは、摂取した食品数の記録(TAKE10!ミャンマー版を開発)を行い、1日に4~5食品以上の摂取で栄養クイズ挑戦権を獲得することができ、更に栄養クイズに正解するとコインを獲得でき、コインを貯めるとインセンティブと交換することができるという仕組みのものである。この栄養教育アプリは全社員の70%が使用し、クイズの正答率の上昇や摂取食品数の増加を確認することができた。このように、対象者の栄養リテラシーが向上したことから、栄養教育アプリが栄養改善のための有効な手段となり得ることが示唆された。また、完全オンラインでもプログラム参加によって行動変容をもたらしうることを示すことができた。 
報告書
「完全オンラインによるブロックチェーン技術を応用したミャンマー職場における栄養改善と教育」報告書(Rigdelinez株式会社)
「完全オンラインによるブロックチェーン技術を応用したミャンマー職場における栄養改善と教育」報告書(ILSI Japan)
「完全オンラインによるブロックチェーン技術を応用したミャンマー職場における栄養改善と教育」報告書(ワールド産業株式会社)
ベースライン調査結果(ILSI Japan)
エンドライン調査結果(ILSI Japan)

フィリピン

フィリピン米の栄養強化調査2021

開始年月
2021年12月
法人名
DSM株式会社、特定非営利活動法人国際生命科学研究機構(ILSI Japan)
パートナー団体
国連WFPフィリピン(2021年度)
Food and Nutrition Research Institute(フィリピン国立食品栄養研究所)(2022年度)
概要
 2021年度調査
 フィリピンは、米の栄養強化に関する法律を制定した世界で初めての国であるが、鉄強化されている米はわずかしかなく、栄養強化米は普及していない。その原因を探るべく、普及のためのこれまでの取組みをマッピングし、サプライチェーン/アドボカシー/キャンペーンにおける問題を特定する調査を実施する。これらの結果に基づき、米の栄養強化に関する法律の実施に向け、より強力な政策を作成するための提言をまとめるとともに、米の栄養強化をビジネスとして実現させ、フィリピン国内の貧血の改善や栄養不良の改善に貢献する。
 2021年度に実施した調査では、課題として①需要と供給のバランスの不均衡 ②サプライチェーンにおけるプランニングやロジスティク、調達面においての脆弱性 ③栄養強化米に対するコストと消費者が見出している価値のバランスの不均衡 ④国内での啓発プログラムが行われていないこと等が分かった。全体的な提言として、①需要の増加 ②生産拠点が不足している地域においての生産強化 ③生産コストの見直し ④価値向上のための啓発 ⑤成功事例からの教訓をもとにした他地域への展開 ⑥個々の地方自治体への働きかけ強化などが提案される。

 2022年度調査
 フィリピンでは人口の多くが鉄をはじめとする多くの微量栄養素が同時に不足している可能性が高いことから、主食である米に複数の微量栄養素を強化することにより解決できると考える。2021年度にフィリピンにおける鉄強化米に関するプロジェクトを実施した結果を踏まえ、2022年度は複数の微量栄養素を強化した米Multiple Micro-Nutrient (MMN) Fortified Riceを導入する可能性について、その必要性や、導入に必要な法規制上の手続き、展開のために必要な施策を明確にすることを目的とした。
 調査の結果、米の栄養強化に関与しているフィリピンの各政府関係機関の役割やMMN強化米の法規制上の承認を得るために必要な事項が明らかになった。また、主食である米に複数の栄養素を強化することは、広範な年齢層において効果を期待できることや、コスト増は大きくないといったメリットも明らかになった。また、鉄強化米の普及活動の経験に基づき、MMN強化米の必要性についての認知を高める為の活動を開始する良いタイミングであると考えられた。以上から、MMN強化米の導入は、フィリピンの大多数の人口が抱える微量栄養素不足という問題を解決するための有効な手段となり得ると考えられる。
報告書
インセプションレポート(2021年度)
「フィリピンにおける米の栄養強化に関するプロジェクト」最終報告書(2022年6月)
「フィリピンのおける米の栄養強化に関するプロジェクト2022」最終報告書(英語版、2023年6月)

アフリカ

「TOKYO8 GLOBAL 栄養改善ビジネスの国際展開支援事業」プロジェクト

開始年月
2022年11月
法人名
株式会社TOKYO8 GLOBAL(株式会社太陽油化、株式会社アセンティア・ホールディングス)
パートナー団体
Green Growth Food Tech(リベリア 2022-2023)、GREEN GARDENS(マラウイ 2023)、Mauri-Yume(モーリタニア 2023)、 University of Ghana Department of Nutrition and Food Science(2023)
概要
 

アフリカ諸国では、食料不足やそれによる栄養不足が深刻な問題となっています。そのため、小規模農業を支援し、農産物の自給率を向上させるプロジェクトが必要です。そこで、バイオ農業資材TOKYO8を活用することで、農業生産性の向上と小規模農業者の経済性向上を目指し、また、スクールガーデンにおいて収穫された農産物をフリーランチ(給食)で提供することで、子どもたちの栄養改善に持続的に貢献することを目指しました。

<2022年度プロジェクト>
本プロジェクトでは、リベリアにある学校において、現地の連携事業者であるGreen Growth Food Techと共同で、スクールガーデンでTOKYO8を利用した農業方法の伝達と教育を行いました。現地のプロジェクト進行状況を確認した結果、フリーランチにおける野菜の使用回数の増加が期待できる状況であったことから、本プロジェクトが持続的な子どもたちの栄養改善につながる可能性を確認することができました。
 また、TOKYO8を用いたビジネス化の実現については、日本サイドから少量のTOKYO8原液を現地の連携事業者であるGreen Growth Food Techに販売し、Green Growth Food TechがTOKYO8をリベリアで再生産(培養)し販売することで収益を得るという製造フランチャイズ形式のビジネスモデルによる展開を予定しています。
 このように、TOKYO8を活用したスクールガーデンによる栄養改善プロジェクトは、アフリカの食料不足や栄養不足という問題に対して、小規模農業を支援しながら貢献することができると考えられます。そして、ビジネスによるこの改善活動で、農業生産性、栄養改善、農業者や地域の経済性を持続的に発展させることを目指します。

<2023年度プロジェクト>
TOKYO8のビジネス化の事業をリベリア・マラウイ・モーリタニアで、スクールガーデンでの野菜栽培事業をリベリアとマラウイで、TOKYO8の科学的エビデンスを得るための事業をガーナ大学で実施。現地調査のため今回はマラウイに渡航し、支援予定先の学校給食の状況を確認した。学校運営予算の60%を主食のトウモロコシ粉に充てるなど、現地の学校経営は厳しく、給食に野菜を使用するためには学校で農産物を自給することが最善であることが分かった。リベリアは現地の情勢不安により子供たちの体重等を計測する機器が届かないなど計画通りに進まない部分もあったものの、TOKYO8を使用したスクールガーデンの農作物の生育は概ね良好であった。マラウイでもスクールガーデンでの野菜栽培が始まっており、収穫した野菜を学校給食に使用することができた。モーリタニアはTOKYO8商品化のための栽培試験を行い、その結果を利用してのマーケティング展開を始めている。TOKYO8の肥料登録は、リベリアでは登録の行政手続き中であり、マラウイは登録申請中である。モーリタニアは肥料登録の必要が無いことが分かった。また、TOKYO8の現地生産をマラウイとモーリタニアで開始。今後もスクールガーデンの継続と、肥料登録に向けて活動を進める。次のフェーズでは、TOKYO8の現地製造によるビジネス化を更に進めることを予定している。 ガーナ大学で、トマトとレタスの生育と収量におけるTOKYO8の効果を実証するための栽培実験を行った。トマトの生産にはTOKYO8の推奨濃度(15 ml/L)が最適であることや、レタスでは、TOKYO8を使用することで根の成長が良くなり、茎も太くなることが示唆された。また、トマトではビタミンAが、レタスでは繊維量が増える可能性も示唆され、TOKYO8の使用により含まれる栄養素に影響を与えるのではないかと考えられた。

 
報告書
  「TOKYO8 GLOBAL 栄養改善ビジネスの国際展開支援事業」報告書(2022年度)
  「TOKYO8 GLOBAL 栄養改善ビジネスの国際展開支援事業2023」報告書(2023年度)
  ガーナ大学報告書「Efficacy of Tokyo8 on the Growth and Yield of Tomato and Lettuce」(2023年度)